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分散投資の考え方

■資産運用の基本は分散投資

 資産運用の基本は、ポートフォリオ全体で考えて、価格変動リスクと期待リターンのバランスを取るという発想にあります。そのための方法論が分散投資と呼ばれるものです。 分散投資の手順は、投資対象とするアセットクラス(資産分類)を考え、各資産が有するリスク・リターン特性を把握する形で進みます。 今回は、リスク・リターン特性と資産選択の関係を取り上げ、分散投資について考えていきます。

 

■アセットクラスのリスク・リターン特性

 

資産ごとのリスク・リターン特性を(図1)に例示しました。有価証券のリスクは一般に標準偏差で測ります。これは各資産の年次リターンがどれだけ上下に振れるかの指標で、平均値から±1標準偏差の範囲に約68%が収まります。

■マイナス金利時代の分散投資とは

 

資本市場線の例を具体的に考えると、無リスク金利(預金金利)のリターンが高かった時代は、投資対象資産の期待リターンに下振れリスクを吸収する余地がありました(図2)。しかし、現状のように無リスク金利がゼロ水準にあり、マイナス金利政策の深堀りも進む状況では、各資産の下振れリスクは、即マイナスのリターンとなってしまう可能性に注意を払う必要があります(図3)。

現在のようなマイナス金利政策下では、価格変動リスクのある資産への投資からプラスのリターンを確保しなければなりません。その場合の分散投資は、少なくとも二つの視点から実践する必要があると考えます。 

ひとつ目の視点は、資産間の価格の連動性の低さ(低相関または逆相関)を重視する分散投資です。例えばリスク資産として株式を考える場合、日本株であれば、代表的な大型株指数だけでなく東証マザーズなどの小型株指数にも分散します。同時に、米国株や欧州株、新興国の株式などにもきめ細かく分散投資をすることを考えなければなりません。 

 

もうひとつの視点は時間分散です。リスク資産の価格が標準偏差に応じて下落する局面で逆バリ投資ができるよう、時間分散の余力も残しておくことが肝要です。過去、金融不安が強まるとリスク資産の相関が高まるという現象も観察されており、市場が不安定化する場合、主要な資産のリターンが同時にマイナスとなる可能性も排除できません。従って、かなり気長に安値を待つという時間分散にも備えておく必要があるといえるでしょう。