資産運用:経済成長と共に

金融における市場機能の重要性


今日的な金融の概念である「ファイナンス」の領域では,① 企業の資本構成に関し、主に資金の「調達」を考えるコーポレート・ファイナンスという分野があり、② 資産価格の決定を考える投資理論として、資金の「運用」に係るインベストメントという分野があります。

この2つの柱は企業と投資家という需要側の視点から「企業価値の最大化を実現するための方法論の体系となっているといえます。そして、ファイナンスの世界では、「市場機能」がより重要な役割を果たしています。

また、金融システム上、円滑な金融取引を担保する様式に、銀行の機能に基づく「相対型」と市場ルールに基づく「市場型」があります。これをよく知られている金融形態と結びつけると、「相対型」は「間接金融」、「市場型」は「直接金融」と相性が良いとされますが、近年、これに加えて、市場をカウンターパートとする「市場型間接金融」の展開が投資信託や年金運用などを通じて進んでおり、特に「株式市場の役割」が高まっている状況にあります

株式市場の変遷(日米の差異)


世界の株式市場において、これまで米国企業の優位が続いています。また、注目すべきはその中身が大きく変化していることで、米国においては『リーディング企業の新陳代謝が進展しています。一方、90年代以降の日本株市場は低調な動きとなっており、米国とは逆の動きであったことが指摘されます。

このことは、国民経済的にみて両国では金融資産のリターンに大きな格差が生じているといえます。このインプリケーションは、例えば、市場型間接金融とされる年金制度で、日米の老後の生活資金の格差につながる状況であったり、また、日本では株式や投資信託の保有比率が低く、投資マインドが弱いといわれる背景を十分説明しています。 

経済成長を実現する企業


一国の経済活動を表すGDPは、フローで見た財・サービスの付加価値の総量ですが、その付加価値は、まず第一、ものが作られるという企業の生産活動として捉えられます。このため、一国の経済成長は、長期的に企業部門の生産の拡大に規定されることになります。

 

企業が生産を拡大し、持続的な付加価値の成長を実現するとき、その成果は株価の上昇に反映されると考えられるため、「長期的に株式価値の上昇を実現する企業の存在が、経済が成長するための基本要件になる」という因果関係が成立することになります。

また、株価を評価する公式(配当割引モデル)を整理すると、株式の期待収益率(r)は、配当利回りと自己資本の成長率(内部成長率)の和となります。このつの項目は株主に帰属する利益の期待値を表しており、株価のリターンが第一義的に成長性に基づく”ファンダメンタルズリターン”であることが分かります。